ボードゲームがコンセプトのホテル

「間」を大事にした空間づくり

「MIMARU大阪 難波STATION」は、2022年6月2日にオープンした130種類以上のボードゲームやホテルオリジナルのゲームが楽しめるエンタメ特化型のホテルです。アルスは「MIMARU大阪 難波STATION」の斬新なコンセプトに合う提案をし、デザインから設計・施工までを行わさせていただきました。

大阪難波は交通の要所であるとともに、様々なカルチャーが混在し独自の文化を生み出す地域です。「MIMARU大阪 難波STATION」は、この何でもありな地域特性の中に誕生し新たな文化を発信し続けています。

開業から1年が経とうとする現在もSNS上でミマルのゲームホテル関連の投稿を目にし、この独創的なホテルが特別なものから日常の延長へと定着しつつあるのを感じます。今回のストーリーではこのホテルのコンセプトや空間づくりを振り返ります。

和のテイストとゲーム要素の融合

空間デザインを行うにあたり、MIMARUホテルらしい上質な和の空間というブランドイメージを保ちながら、ボードゲームの要素を加えるという面白さと難しさがありました。

MIMARUホテルは、日本全国に27店舗展開(2023年5月時点)しています。リピーターも多く、お客様がホテルに入った瞬間にMIMARUホテルに帰ってきたという安心感を持ってもらうことも必要でした。また、ボードゲームのパッケージはカラフルなものが多いため、これらのイメージを踏襲すると空間全体が煩雑になることも予想されました。

ミマルホテル受付
受付まわりラフデザイン
ミマルホテルエレベータ前
エレベーターホールラフデザイン

そこで、和のテイストとゲーム要素を違和感なく融合させるために意識したのが、日本ならではの「間」と「円」でした。

「間」をつくる

物質的にも感覚的にも程よい「間」は、人々が快適と感じる空間です。ミマルホテルの空間づくりでは、この「間」を意識しています。

例えば、ラウンジは日本ならではのコミュニケーションの場である「縁側」をイメージしています。古くからの日本家屋の縁側では囲碁・将棋をしたり、お茶でおもてなしをしたりとサロンのような使われ方をしていました。気軽にほっと腰を降ろせる縁側文化に現代のテイストを取り入れることで、心地よい距離感でゲームができる空間を作り出しました。

ミマルホテル
ラウンジ、縁側と円形の入口

「円」でつなぐ

さらに、空間づくりの考え方の中心にあったのは「円」でした。ミマルホテルはラウンジ入口や受付背後に円窓をモチーフにしたデザインを取り入れています。

古くから円窓は2つの異なる空間の境界であり、音、光、空気を感じるつながりでもあります。円を用いることにより日本の美を感じながら、限られたスペースをエリア分けするのに効果的です。

「間」をつくり、「円」でつなぐ。適度な距離感が心地良いと感じる日本的な美を取り入れた空間は、日本人にとっては心地よく、海外の人にとっては日本文化を感じることができる要素だと思います。

ミマルホテル
ラウンジ、縁側と円形の入口

毎月変わる花札オブジェ

受付の背後にある円窓には、月毎に変わる花札の絵柄をデザインしたオブジェを設置しました。花札は4枚一組で12ヶ月の月の花をあしらった日本独自の“カードゲーム”です。

花札をモチーフにしたのは、訪れるたびにデザインが変わり、季節感と新鮮味を感じてもらいたかったからです。また、このオブジェは金属のフレームと和紙でできていて、この組み合わせもモダンな印象を出しています。

終わりに

空間づくりはどれも限られたスケジュールの中でデザインし設計・施工を行います。その制約の中で最高のパフォーマンスを発揮することが私たちの腕の見せどころでもあります。クリエイターの生みの苦しみを感じる場面もありましたが、アイディアと技術の引き出しが増えた機会でもありました。

「MIMARU大阪 難波STATION」は、そのコンセプトと写真映えするインテリアにより、ウェブ上で広く情報拡散しています。ここには昨今の広告媒体の変化も見てとれます。そして、プロモーションを鑑みた空間づくりの需要も、ますます増えていくことと思います。今回の空間づくりは、変化していく世の波をより感じたものでもありました。

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